蒼穹ト雨音。

イナゴでチョコ話。狩屋ver.

「ちっくしょお!!!」


バンッ


打撃音が響く。

 ころころと転がるボールは、速度を落としながら地面を転がって止まった。

 それは静かにこつんとシューズの先に当たり、虚しさが喉の奥から沸き上がってきた。

 
最近どうも上手くいかない。

 サッカーでも思うようにいかず、チームから浮いていることくらい薄々感づいている。


「チッ……」


苛立ちのままに舌打ちをしても、喉にある異物感は一向に治まらない。

物に当たるもんじゃない、と、どこか冷静に考えた俺の頭は、いつもの家路へ足を投げ出すようにして動かした。


「――――……っ」

息が上がり、走り疲れた俺は、そこのベンチにガタンッと音を立てて荒々しく座った。

それさえも苛立った俺は、あああああああっ、と頭を抱えて唸った。

あああもうちっくしょう、なんで治まんねえんだよッ!


「…ねえ」


ふと、頭の上から声がした。


「チョコ、いる?」


そこには俺と同い年くらいの、綺麗な白い髪の子が立っていた。

男か女かはわからない。

そいつは、俺に小さなチョコを差し出してきた。


「………」


俺が黙ってそれを見つめていると、そいつは薄く開いていた俺の口にチョコをころりと入れてきた。


「んむっ」


一瞬飲みかけそうになりながらも、なんとか喉を通る前にもちなおす。

んだよこいつ…ッ!”チョコいる?”とか訊いてきたくせに自分で押し込みやがった…!


「どう?美味しい?」


にこ、と微笑む彼…彼女か?

とりあえずそいつは綺麗に笑って俺を見た。

俺はぜってー美味しいとか言ってやんねえとか思いながらチョコを舐めてみるけど、ちくしょうこれ意外と美味しい。


「……別に」

「そっか、よかった」


ふわ、と優しく微笑む。

癖のついた真っ白な髪が、ふわりと揺れた。

ああ、よく分かんねえ。こいつ。


「そうだ、よかったら見ていってよ」


僕のチョコの家。

そう言って立ち上がり、俺の座っているベンチの斜め後ろにある扉を開くそいつ。

いつもなら、更にこんな苛立ってる俺ならついていかねえのに、俺は自然とその扉を通っていた。




***




「じゃーん」


たたん、と、そいつは両手を広げて満面の笑みで俺を見た。

この部屋には、いくつもの白いテーブルの上に、綺麗に飾り付けられた色とりどりのチョコが並んでいた。

甘ったるすぎない、優しい甘い香りが部屋に漂い、俺は一瞬違う世界に来たのかと錯覚した。


「…これ……全部、チョコなのかよ」

「そうだよ。あ、そういっても、テーブルや床は別だけどね」

「そういうことを言ってるんじゃねえって!」


くすくすと笑いながら俺を見るそいつ。ああもう腹立つ。ちくしょう。


「あ、そうだ。」


ふ、と思い出したようにそいつが言う。


「君にね、見せたいものがあるんだ。」

「…初対面なのに?」

「いいから待ってて!」


たたっ、と奥の部屋にかけていくそいつ。

少しして、手に小さい箱を持って帰ってきた。


「はい」


ずい、と箱を差し出された。

ちょっと後ろに仰け反りながらも、それを受け取って開く。


そこには、小さなチョコが入っていた。

手でつまむくらいの大きさの、文字通り太陽の光を集めたような黄色。

太陽の光をぎゅって集めたんじゃなくて、なんていうか、その部分だけ太陽の光を切り取ってきたというか…、集めてきた感じ。なんかこう、自然な……あああっもう、言葉が見つかんねえ。


「…これ、」

「うん、食べていいよ。君にあげたいと思ったんだ。あげる。」

「…じゃあ…、…いただきます。」


ぱくん、とチョコを口に含んだ。


「……どう?」

「………すげえ……、美味しい、っていうか…、」


なんつーんだこれ、


そいつは、ふわりと微笑んで、


「君にあげてよかった」


そう言った。

さっきまでの苛立ちなんて嘘みたいで、俺はすごく不思議な気持ちになった。

あああああ、なんだよこいつ、すげえ…ふわふわする。

……あー、そういや、いい加減名前とか聞かなきゃな。


「…なあ、お前、名前は?」

「……んー?名前?」


ほわほわと笑っていたそいつが、相も変わらず笑いながら言った。


「…んー…


……何で自分の名前言うのにそんなに悩むんだよ。


「……エルだよ」


…エル。


「…なんかエンジェルの略みたい。嘘くさ」

「……エンジェルかあ…」


少しそいつは考えるような素振りを見せたあと、笑った。


「嬉しいや。ありがと。マサキ」

「…なんだよ…変なの」


そいつ…エルは、くるくると嬉しそうに笑っていた。


「…あ、俺もう帰らなきゃ」

「……そっか。…またいつでもおいで。歓迎するよ」


にこ、と笑っていうエル。


「ん。わかった。またいつか来るよ。じゃ。」

「…うん。ばいばい、マサキ」



ガチャン。



俺はそのあと、どこかあいつの笑顔と同じようにふわふわした気持ちで自分の家路を辿った。









「ねえねえ狩屋!昨日あのあとどこ行ってたの?忘れ物してたから届けに行ったのに、どこ探してもいないから心配したよ?」

「ごめんごめん。…えーっと、昨日は確か…」

「確か?」


えっと…


「……なんだっけ。忘れちゃった。」

「ええ!?昨日のことなのに!?狩屋大丈夫!?」

「それ何気に酷いよ、天馬くん」






( ばいばい、マサキ。 )





狩屋でチョコ話。

イナゴでチョコ話。狩屋ver.

「ちっくしょお!!!」


バンッ


打撃音が響く。

 ころころと転がるボールは、速度を落としながら地面を転がって止まった。

 それは静かにこつんとシューズの先に当たり、虚しさが喉の奥から沸き上がってきた。

 
最近どうも上手くいかない。

 サッカーでも思うようにいかず、チームから浮いていることくらい薄々感づいている。


「チッ……」


苛立ちのままに舌打ちをしても、喉にある異物感は一向に治まらない。

物に当たるもんじゃない、と、どこか冷静に考えた俺の頭は、いつもの家路へ足を投げ出すようにして動かした。


「――――……っ」

息が上がり、走り疲れた俺は、そこのベンチにガタンッと音を立てて荒々しく座った。

それさえも苛立った俺は、あああああああっ、と頭を抱えて唸った。

あああもうちっくしょう、なんで治まんねえんだよッ!


「…ねえ」


ふと、頭の上から声がした。


「チョコ、いる?」


そこには俺と同い年くらいの、綺麗な白い髪の子が立っていた。

男か女かはわからない。

そいつは、俺に小さなチョコを差し出してきた。


「………」


俺が黙ってそれを見つめていると、そいつは薄く開いていた俺の口にチョコをころりと入れてきた。


「んむっ」


一瞬飲みかけそうになりながらも、なんとか喉を通る前にもちなおす。

んだよこいつ…ッ!”チョコいる?”とか訊いてきたくせに自分で押し込みやがった…!


「どう?美味しい?」


にこ、と微笑む彼…彼女か?

とりあえずそいつは綺麗に笑って俺を見た。

俺はぜってー美味しいとか言ってやんねえとか思いながらチョコを舐めてみるけど、ちくしょうこれ意外と美味しい。


「……別に」

「そっか、よかった」


ふわ、と優しく微笑む。

癖のついた真っ白な髪が、ふわりと揺れた。

ああ、よく分かんねえ。こいつ。


「そうだ、よかったら見ていってよ」


僕のチョコの家。

そう言って立ち上がり、俺の座っているベンチの斜め後ろにある扉を開くそいつ。

いつもなら、更にこんな苛立ってる俺ならついていかねえのに、俺は自然とその扉を通っていた。




***




「じゃーん」


たたん、と、そいつは両手を広げて満面の笑みで俺を見た。

この部屋には、いくつもの白いテーブルの上に、綺麗に飾り付けられた色とりどりのチョコが並んでいた。

甘ったるすぎない、優しい甘い香りが部屋に漂い、俺は一瞬違う世界に来たのかと錯覚した。


「…これ……全部、チョコなのかよ」

「そうだよ。あ、そういっても、テーブルや床は別だけどね」

「そういうことを言ってるんじゃねえって!」


くすくすと笑いながら俺を見るそいつ。ああもう腹立つ。ちくしょう。


「あ、そうだ。」


ふ、と思い出したようにそいつが言う。


「君にね、見せたいものがあるんだ。」

「…初対面なのに?」

「いいから待ってて!」


たたっ、と奥の部屋にかけていくそいつ。

少しして、手に小さい箱を持って帰ってきた。


「はい」


ずい、と箱を差し出された。

ちょっと後ろに仰け反りながらも、それを受け取って開く。


そこには、小さなチョコが入っていた。

手でつまむくらいの大きさの、文字通り太陽の光を集めたような黄色。

太陽の光をぎゅって集めたんじゃなくて、なんていうか、その部分だけ太陽の光を切り取ってきたというか…、集めてきた感じ。なんかこう、自然な……あああっもう、言葉が見つかんねえ。


「…これ、」

「うん、食べていいよ。君にあげたいと思ったんだ。あげる。」

「…じゃあ…、…いただきます。」


ぱくん、とチョコを口に含んだ。


「……どう?」

「………すげえ……、美味しい、っていうか…、」


なんつーんだこれ、


そいつは、ふわりと微笑んで、


「君にあげてよかった」


そう言った。

さっきまでの苛立ちなんて嘘みたいで、俺はすごく不思議な気持ちになった。

あああああ、なんだよこいつ、すげえ…ふわふわする。

……あー、そういや、いい加減名前とか聞かなきゃな。


「…なあ、お前、名前は?」

「……んー?名前?」


ほわほわと笑っていたそいつが、相も変わらず笑いながら言った。


「…んー…


……何で自分の名前言うのにそんなに悩むんだよ。


「……エルだよ」


…エル。


「…なんかエンジェルの略みたい。嘘くさ」

「……エンジェルかあ…」


少しそいつは考えるような素振りを見せたあと、笑った。


「嬉しいや。ありがと。マサキ」

「…なんだよ…変なの」


そいつ…エルは、くるくると嬉しそうに笑っていた。


「…あ、俺もう帰らなきゃ」

「……そっか。…またいつでもおいで。歓迎するよ」


にこ、と笑っていうエル。


「ん。わかった。またいつか来るよ。じゃ。」

「…うん。ばいばい、マサキ」



ガチャン。



俺はそのあと、どこかあいつの笑顔と同じようにふわふわした気持ちで自分の家路を辿った。









「ねえねえ狩屋!昨日あのあとどこ行ってたの?忘れ物してたから届けに行ったのに、どこ探してもいないから心配したよ?」

「ごめんごめん。…えーっと、昨日は確か…」

「確か?」


えっと…


「……なんだっけ。忘れちゃった。」

「ええ!?昨日のことなのに!?狩屋大丈夫!?」

「それ何気に酷いよ、天馬くん」






( ばいばい、マサキ。 )





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